MRAの強みで、新たなシミュレーションを開発
日本ではクルーズ船内での感染の拡大を皮切りとして全国的に感染が広がり、小中高校が臨時休校となり、
4月には全国に緊急事態宣言が出されたことは、誰もが知るところだろう。
しかし、社会が激変していく中、かつてない規模の問題に向き合う姿が、MRAにあった。
数理システム事業部
広域社会解析チーム
チームリーダー
2020年入社
理工学研究科・総合デザイン工学専攻 修了(博士)
加速器を用いた物理実験および、スーパーコンピューターを用いた大規模計算により博士号を取得。電子や粒子の動きの計算は、人の動きの計算に通じるものが。最近は実家の犬に会えず、SNSで犬の写真を検索して眺めることが日課に。
数理システム事業部
広域社会解析チーム
2020年入社
情報学研究科・複雑系科学専攻 修了
修士では、物理や情報学をベースに社会科学的問題にアプローチ。所得格差が生まれる仕組みなどを計算した。プログラミングが趣味で、EC サイトを監視して、欲しいものが出品されるとアプリへ通知が来るプログラムを自作。欲しいものをGETしたことがあるほどの腕前。
01
プロジェクトの背景
「シンクタンクとしての使命である」という思いから
結論から言えば、このプロジェクトで行ったことは、新型コロナウイルス「COVID-19」の感染拡大防止策の提言だ。人々の接触に着目して、原理に基づいた数値計算の観点から具体的な施策・行動の指針を発表している。
緊急事態宣言の発令は感染の抑制に対し一定の効果をあげたものの、経済活動の維持と感染の抑制を両立するための明確かつ効果的な施策の確立は、まだ道半ばというところだろう。とはいえ、新しい社会の在り方について、早期に科学的な知見から提言することが大変重要であることは疑いない。
どのような経緯で、プロジェクトはスタートしたのか。
「その頃、『SIR モデル』と呼ばれる計算方法が注目されていました。これは、日本全域の感染者情報を基にしたシンプルでスピーディーな分析で、計算コストも抑えられ、早急な政策提言などが求められる際に有効なマクロモデルです。しかし、人々のどのような行動が感染の拡大に影響し、どのような行動をカットすることで感染が減るのか、そのメカニズムを明らかにすることはできません。以上を踏まえ事業部内でディスカッションを行った結果、ミクロな視点から詳細な数理的分析を行った政策評価が必要であると結論に至り、それならば数理モデルを用いたシミュレーションに強みを持つMRAがやるべきだと、会社の上層部へ提案しました」
では、MRAが単独で実施したということか。
「6月くらいまでは全世界および日本全体としてどうなのか、少し大きな視点から分析が行われ、感染の対策に関するポイントをMRIが提案していきました。MRAはその裏で、もっと精緻な分析が可能かを検討していました。より細かいシミュレーションや数値計算が得意なことはMRAの強みですので、より良いデータが出せるようにというわけです。その後、8月の第二波の最中に、感染を再び拡げないためにはどうすべきかをミクロな視点によるシミュレーションの結果から提案しました」
02
取り組みと成果
グループの力を活用し、高度な計算を遂行
具体的なデータで、明確な指針を発信
MRIグループとして動き出した施策の中で、MRAのプロジェクトチームが担った「より細かいシミュレーション」とは、どのようなものだったのだろうか。その具体的な内容と、チームに掛かった重圧や苦労を聞いてみた。
「そして、MRAは独立した一つの会社ではありますが、シンクタンクとして何か一つのことに向かう際、気軽に相談できる相手としてMRIがいてくれることは大変心強いです」
苦労したこととして、大きなポイントは。
成果を出すまでに、相当な時間がかかったのでは。
「その後、シミュレーションに対し、"いつ・どこで・誰が・誰に感染させられたか"を追跡できる機能を追加し、結果に対するネットワーク分析を行い、国内におけるコロナウイルスの感染の連鎖現象を可視化しました。本結果の一部について弊社のWebサイトにてコラムとして公開したところ、コラム本文が国立大学の入試問題に利用されるなど、大きな反響がありました。本内容は科学的にも重要な知見を与えるものであるため、学術論文として取りまとめ、投稿しております」
03
プロジェクトの意義と展望
目先の利益に囚われることなく、
社会の未来、そしてMRAの将来につなげる
社会的に大きな価値があるシミュレーションを自発的に行い、世の中へ発信した本プロジェクト。ただ、それではビジネス的な利益は生み出されないのではないだろうか。MRIグループとして、どのような意義があったのだろう。
「とはいえ、こういったことが結局は事業にも繋がっていくのではないかと考えています。今回のようなシミュレーションを迅速に行う力があることを示せたことで、今後『災害の発生が社会に対して与える影響について分析したい』というニーズがあった時に、アピールできる実績になるでしょう」
今回の経験を活かせる機会として、今後どのような展開が考えられるか。